総州書房雑録

読んだ本の感想、考えたことを書いて行きます。

フィッツジェラルド 「リッチボーイ」

主人公のどこまでも自分本位な姿がいたたまれない。 誰のことも愛したこともなく、愛の何たるかも知らない。 叔母の不倫を解決した際にそれが端的に現れている。「心弱き者の迷い」を容認することが彼にはできない。 彼が愛したのは、自分の家柄であった。 …

峠(下)備忘編

スピードは金。 兵馬の精強無くして一般の正義無く、独立なく、自尊なし 人はその長ずるところによって身を過つもの。 長ずるところを用いられないと、鬱積する。 そうなると何とかしてその長ずるところを用いようとして現実を歪んだ解釈をしてしまう。 長じ…

峠(下)概要編

深川の藩邸から西洋商人スネルの船で江戸から脱出する継之助。 船内で後の日露戦争の英雄となる桑名藩士・立見尚文と談笑する継之助。 話しは「立場論」を中心に進んだ。 船は仙台で会津藩士を降ろし、函館で米を売り払い越後に帰り着く。 継之助が洋上にあ…

峠 中巻 【備忘編】

賢臣を登用し登用した以上は信用しきるのが名君の道 異例になると羨望から足を引かれる細心の配慮をせよ 改革はゆっくりとやるのが上策だが危急の時にあってはあっという間が良い みずから出向き みずから調査する 私情も私心も、命も捨てているものが強い …

峠 中巻 【概要編】

峠(中)司馬遼太郎 故郷に帰った継之助は役人として新しく領地になった村の内紛を見事に収拾して出世を遂げる。郡奉行と町奉行という藩行政の全ての頂点に座った彼は藩の改革に着手する。 ・賄賂の禁止・汚職役人の免職・寄せ場と呼ばれる「更生施設」・賭…

峠(上巻)読書備忘

峠(上)(司馬遼太郎) 河井継之助は越後長岡藩の100石格の家に生まれた。幼き頃よりいつか藩の宰相になるを誓い、その行動力を磨くために幕府の公認学派の朱子学ではなく、知行合一の陽明学を学び続けてきた。 彼は命の危険を冒しながら旅をした。それは雪…

トマト

足元に、トマトが転がっている。 私は日課の散歩道を歩いていた。長い坂道の途中の…閑静な住宅街であるから、どこぞの家庭菜園から転がってきてしまったものらしい。 私はその誰の口にも供されない運命の熟れた野菜を横目に坂を上り続けた。 ついでに、こん…

越山

越山、揮毫を頼まれるたびにその雅号を好んで用いた政治家がかつて存在した。 当たり前のことではあるが、彼の本名の威勢に比して雅号(越山)の知名度の低いことは否めない。 越山・田中角栄。 いわく「コンピューター付きブルドーザー」「目白の闇将軍」……

漂泊の王

安西、という人が新卒のころの同期入社組にいた。初対面での不躾を承知で「もしかして千葉の南の方の出身?」と聞いてみたのをよく覚えている。 「え?そうだけど…?」本人は驚いてはいたがなんのことはない。里見氏に滅ぼされた安房の豪族に同じ名前があっ…

若ちゃん痛風日記【ペイン!ダディ!ペイン!】

「痛風」になった。地獄の苦しみ。 でも、この苦しみは初めてじゃない。前にも経験したものだ。 そのたびに「もう生活習慣を改めます、神様…なのでどうか…じーざすくらいす」と眠れぬ夜に、天井に向かって手を合わせた。 なんだか…どこかで聞き覚えのあるセ…

ど素人、和歌を読む その3

「ふふ…変わったお歌ですこと」「そうか?どこが変だ?」 窓の外で、小鳥が朝の訪れをせわしげに告げている。 衣擦れの音は、閨の睦言の代弁者。そこかしこに散った衣たちは、逢瀬の残り火。 衾にくるまった男女がそこにいた。 「なんだか…野暮ったいという…

ど素人、和歌を読む その2

「まぁ!…陛下ご覧ください…。」「どうしたの…おやまぁ…。」 侍女の指さす彼方。真っ白の衣が、新緑のきらめく香具山に幾旒もたなびいていた。 香具山は古来、夏の訪れとともに衣を干すとされる。 神事や公務に追われて、私の知らないうちに季節は夏に移って…

ど素人、和歌を読む その1

「私の代わりに泣いてくれているのか」ふと、我が袖を湿らせる夜露に語りかけた。百姓たちが丹精込めて作った稲たちは一日でも早い収穫を哀訴するように実った稲穂を上下させている。「…冷えるな」収穫前の稲を盗人から守るために、百姓たちは田のそばに仮説…

ダイエットブログ その1 (現状把握と目標設定)

こんにちは、若旦那です。 今回のブログからやっとダイエットブログとして始動です。 表題の通り、まずは現状の把握からしていきましょう。 2020年7月28日の朝のデータですね。 体重:89.9㎏ 体脂肪:24.7% 内臓脂肪レベル:11.0 BMI:28.4 …うん、なるほど…

ダイエットブログ そのゼロのその2

どうも、若旦那です。 wakadan7.hatenablog.com 前回のブログからの続きになるのだが、 早速、かのメンタリストDAIGOさんが紹介していた 「カルフォルニア式 6週間 人生改造プログラム(ババン!)」というものの、 要旨を以下にまとめてみた。 カルフォル…

ダイエットブログ そのゼロ

太った。 めちゃくちゃに太った。 どれくらい太ったかといえば実に 1年間で16㎏太った。 (73㎏→91㎏) これは事件である。 以前のブログに書いたけれど、私は痛風持ちである。 wakadan7.hatenablog.com 2年間と少しの引きこもりの間に90㎏オーバーした私…

”勇気”の心理学

大変、遅ればせながら… 数年前から評判になっている、アドラー心理学「嫌われる勇気」を読んでいる。 まだ途中ではあるのだけれど、とてもタメになったので、 そこだけ取り急ぎ、備忘のために書き残しておきたい。 アドラーは、ユング、フロイトと並ぶ心理学…

徳、常に、術に勝る。

孟夏の太陽 (宮城谷 昌光 著) を読んだ。 古代中国のとある国において、国家を主導した宰相の一族の 栄枯盛衰を描いた短編集である。 宮城谷先生の著作はどれもこれも、 己の人としての、在り方を問われるものだ。 ここのところ、題名にある言葉をよく考え…

ある寓話にことよせて

昔々あるところに 男がいた。 ある日、男が鏡をのぞくと、そこにうつる自分の姿がひどく汚れて見えた。 男は一生懸命にその鏡を磨いた。 しかし、いっこうに鏡にうつる自分の姿は美しくはならない。 汚いままだ。 腹をたてた男が鏡を割るために、外に出よう…

ぶすいなるままに

まずは、この歌をお読みください。 「武士の矢並つくろふ小手の上に霰たばしる那須の篠原」 ※武士(もののふ) これは源実朝が詠んだ歌だ。 シンプルな実景を詠みながら、詠み人のエネルギーが選び抜かれた語彙をもって具現化されて少ない情報量の中に雄渾な…

或る うたびとに よせて

新進気鋭の若手歌人(ということにしておきます)深水きいろさん。 彼女の生誕祭が先日行われ、そのアンサーソング(なんじゃそら)として、ふたつのネプリが彼女より配信されました。(【ねごと短歌】と【境界】) 今日は、このふたつの珠玉の歌の集まりか…

卯月 短歌あつめ

四月に詠んだ歌を集めてみました。 長いのでお付き合いいただける方だけ、よろしくお願いします。 ゆきやなぎ 東風をまちわび みどり葉が 白髪なれりと 恨みごと言う (素敵な女性から雪柳という花を教えていただきました。その時思いついた歌です。恨み言と…

ふじさん

これから、本当にお前ってツマらない奴だなぁ、 というブログを書こうと思う。(そもそもバレてるだろうから構いはすまい) 大学生のころ(こんな私にもゼミ合宿で酔い潰れたり、キャンパスのベンチで酔ってたりした真面目な学生の時代があった) 富士山に登…

こんにちは、和歌ちゃん

和歌はカッコいいのだ。 和歌(に限らず自分の趣味のアウトプットには人それぞれ信念があるはずだけど)は私にとって、カッコいいものである。 伝わらないとは思うが、深田恭子さんやセーラームーンというよりかは、魔人ブウに捨て身で立ち向かう時のベジー…

んさきたるーえぴ

新年早々、痛風になった。 痛い痛いとは聞いていたし、自分もお肉は好きだわ、お酒は好きだわだったので注意(にしたって痛風さんて方、いらっしゃいますよねぇ奥さま、程度だったけど。)はしていたが。 聞くとなるとでは大違いだった。 スサマジクイタイ。…

今でしょ!

○○さんがまだいた頃さぁ 実家に帰省した折に伯母との会話でふとその名前が出た時、私はその名前が誰のものかにわかに思い出せなかった。 一瞬の沈黙の後、私はその名前をなんとか記憶の棚から引き出すことには成功していた。 ○○って親父の名前か(笑) そう…

いかり ぱんでみっく

「あー、いけないんだー。先生に言っちゃおー。」 もはや名前も…ましてや彼が犯した罪状すらも覚えていないが(申し訳ない限りである)かつて幼少期に、同級生が他の同級生にそう大声で叫ばれていたのを思い出した。 そうなると、先生が呼ばれる。 他の生徒…

ぱっしょん

思想家というものについて考えていた。 彼らは、常に既存の概念や現実への挑戦者であり、夢想家、理想家と表裏一体のものであっただろう。 翻って言えば、夢想家や理想家の側面を持たない『思想家』は単にモノが見え過ぎる毒舌家といった存在に過ぎず、思想…

チョンマゲとトーガ

源平の頃より江戸時代になって、 宋学(いわゆる朱子学)の概念が 根付くまで、日本の武士階級には厳然とした『主従関係』という上下関係は無かった。(主従の人間的美談ならあるが、一つの統一された行動様式としては、わずかに織田信長とその家臣団があっ…

教養と立場

司馬遼太郎の幕末に関する小説2冊を続けざまに読んだ。 ① 最後の将軍 ②酔って候 の2冊である。 1冊目は江戸幕府最後の将軍、徳川慶喜を主人公にした作品であり、2冊目は幕末に存在した四人の藩主に関する物語である。 『最後の将軍』の主人公、徳川慶喜は世…