総州書房雑録

読んだ本の感想、考えたことを書いて行きます。

峠 中巻 【備忘編】

賢臣を登用し登用した以上は信用しきるのが名君の道

異例になると羨望から足を引かれる
細心の配慮をせよ

改革はゆっくりとやるのが上策だが
危急の時にあってはあっという間が良い

みずから出向き みずから調査する

私情も私心も、命も捨てているものが強い

俺の日々の目的は犬死ができる人間でいること
死を飾り、死を意義あるものにせんとする者は虚栄の徒であり
いざとなれば死なぬ。
人間は朝夕に犬死の覚悟をあらたにしつつ生きる意義のみを考える者が偉い。
今、夜道を行く
この風が身体を吹きぬけているようでなければ大事はできぬ。
肉体はどこにもない、からだには風が吹きとおっている。
一個の気だけが歩いているそれが俺さ。

政治をするものは身が寒い。
わが身をそういう場所に置かねば領民はとてもついてこない。

まず胆をうばってから道理を説き、ふたたび相手が首をもたげると別の一手でいま一度胆をうばい、最後に酒宴でうちとけさせる。

改革にはまずその理由を明快に開示する。

噂を流し周囲にその心の準備をさせる。

妻子を江戸に質にする参勤交代こそ幕府の諸侯統御の屋台骨であった。

古来天下の覇権は東海道を行きつ戻りつした。

理も非も無く武士としての美しさを守るものが武士である。

人間を動かすのは理屈ではなく、情念。

倫理道徳は時勢によって変わる。
あたらしい時代を拓くものは新しい倫理道徳を創めねばならない。

時と場合と相手に合う服装ができるこれを礼譲と言う。

その人と仲良くなりたければ、その人と同じものを食べる。

よき孔孟の徒とほど、老荘の世界への痛烈な憧憬者さ。

危急のおりに腰を据えるものこそ重宝なり。

危急を感じた時に、人はどんな手術や苦い薬も甘受する。
政治とは時機を見ること。

悲境でも揺らがぬ原則を立てる。

物事を行う時は単純明快が良く
八方誰のためにもよい政策などない。
何事かをするということは結局は何かに害を与える。
何事かに害を与える勇気のないものに善事は行えない。
知恵の道は寒く、むごい。

現場主義であれ。

情報収集力・通信力が勝負を分ける。

先の先の先を見越して今日の手を打つ。

苦しめて弱らせ、しかし殺さずに仲間にする。

人間にとって必要なのは視角を変えることであり
他人の視角をおもしろがること。

辛い姿を見せぬ美学。

命は使う時に使わねば意味がない。
命は今日のため、それが終われば明日のため。
命は事を行うための道具に過ぎない。

身を捨てる覚悟があるばかり。
勇猛心を持たずば火事場に飛び込むことはできず
そうならずば何事も無しえぬ。

忠誠心、利己心も無く、おのれをかばうところもない。
さらになお、命を張る。

政治は力、力は抑止力。
戦う戦わぬではなく、戦えば必ず勝つ体勢さえ整えれば
物事は好転するものである。

自分を賭けモノにする気概。

命令の統一、連携、報告が大事。

カラリとせよ。悪事も朗らかになせ。

人間の迷信のうちでもっとも害をなすのは年齢への信仰。

ことを行うには何よりもまず知ることが大事。

人民の権利を拡大して社会参加を促すことで
より重要な人材を国家に吸い上げうる。

金の実力が第一。
言論より金銭。

弱い、愛する自分と家族を守ろうという庶民で
この社会はなりたっている。

「訓練」とは人間の弱さを計算式に入れた反復行動。
恐れても体が記憶するようにする。

覚悟があってこそ、士。

覚悟があってこそ
政略、戦略があり、戦術がある。
根っこは覚悟である。

自分の覚悟を相手も持つと思うな
ことを為すに希望を待つな。

自ら決め、自ら赴き、自ら観て、自ら行え。