総州書房雑録

読んだ本の感想、考えたことを書いて行きます。

2021-08-01から1ヶ月間の記事一覧

トマト

足元に、トマトが転がっている。 私は日課の散歩道を歩いていた。長い坂道の途中の…閑静な住宅街であるから、どこぞの家庭菜園から転がってきてしまったものらしい。 私はその誰の口にも供されない運命の熟れた野菜を横目に坂を上り続けた。 ついでに、こん…

越山

越山、揮毫を頼まれるたびにその雅号を好んで用いた政治家がかつて存在した。 当たり前のことではあるが、彼の本名の威勢に比して雅号(越山)の知名度の低いことは否めない。 越山・田中角栄。 いわく「コンピューター付きブルドーザー」「目白の闇将軍」……

漂泊の王

安西、という人が新卒のころの同期入社組にいた。初対面での不躾を承知で「もしかして千葉の南の方の出身?」と聞いてみたのをよく覚えている。 「え?そうだけど…?」本人は驚いてはいたがなんのことはない。里見氏に滅ぼされた安房の豪族に同じ名前があっ…