総州書房雑録

読んだ本の感想、考えたことを書いて行きます。

卯月 短歌あつめ

四月に詠んだ歌を集めてみました。

長いのでお付き合いいただける方だけ、よろしくお願いします。

 

ゆきやなぎ

東風をまちわび

みどり葉が

白髪なれりと

恨みごと言う

(素敵な女性から雪柳という花を教えていただきました。その時思いついた歌です。恨み言とは言えどことなく冗談めかしたそんな印象。照れ笑いが出来る人がいるのは幸福。)

 

露西亞には

我によく似た

人びとが

息も凍らし

馬を追うらし

(私たちはどこから来たんでしょうか、テレビで世界で最も寒い地域の特集をやっていました。馬を追っている私たちに良く似たあの人たちとなんて離れた、私たちの生活。)


からごころ

やまとごころと

分け去るは

おおみこころに

かなうものかは

元号のこと、日本古来の言葉だとか中国の言葉ですとか色々あるんでしょうか、大御心とは陛下の心、その御心のようにもう少し高いところから色々眺めて行きたいですね。)

 

神去りて

七日のみわざ

終われども

とこしえの時

人はにないて

(神様は7日かけて世界を作られたそうですね、どこでお休みされてるのでしょうか、そこからは宿題?随分と難題を残されていきましたね。みんなウンウンうなってます。)

 

年ごとに

こころぐるしや

うすべにの

花じゅうたんを

ふみつけにする

(あんなにも待望されて、あんなにも惜しまれる、桜は幸せな花です。淡麗な薄紅の花びらをきたない私の靴では踏めないような気がして、逡巡。)


ぬばたまに

ぴしりと音が

する程の

空気冴えたる

冬がなつかし

(なんとなく夜に暖かみを感じて、人はわがままなものです。身を切るような引き締まる冬の夜の孤独も懐かしい。)

 

朝ぼらけ

はるつげどりの

なきごえは

散る花憂う

われを励まし

(うぐいす、の別名。春告げ鳥、あなたがまだ鳴いている間は花が散っても春なのでしょうね。安心しました。)

 

さくらばな

のみが花では

あるまいと

むげに踏まれし

パンジーが泣く

(桜を眺めて、みんなが上を向いてカメラを掲げています。花壇に踏み散らされたパンジーを見つけて、胸がつまりました。誰かは、きっと気づく。)

 

あしばやに

過ぎし人には

気づけまい

道わりて咲く

たんぽぽの花

(強い人は速い、ぐんぐん先に進んでしまいます。どんどん置いてかれた私と路地裏のたんぽぽ。)

 

降る雨の

ふとぬくまりし

気のすらば

我が頬つたう

涙なりけり

(雨すらも温まりを増してくる季節、泣きたくなったら外に出ると良いのかもしれない、まやかしごまかし、濡れねずみ。)


為すことと

為さざることの

ちがいのみ

五尺九寸

我と積もりて

(じぶんがしたことと、しなかったこと選んだこと捨てたこと、私はその残りっカス。)

 

時くれば

誰に褒めらる

こともなく

土わりて咲く

君よ尊し

(比べるのは苦しい、人から褒められることだけ待つのは苦しい。わたしには花も実もないけれど今年もわたしを生きてる。)

 

みどりとは

ひとくち言えど

とりどりの

みどりが満たす

里山におり

(緑というとヒトコトで終わり、でもひとたび山に分け入れば、様々な緑の交わりに触れることができます。ニンゲンも同じでしょうか。)

 

楚の人に

嫁ぎしことは

忘れても

頬赤らめる

ひなげしの花

劉邦に討ち取られた項羽に連れ添った虞美人の死後、その後にそっと咲いたのがヒナゲシだとか。何千年経っても、その人を想って。)

 

鬱金

げに艶やかな

君なれど

ヒンドゥークシュを

越えて来たるや

(チューリップを鬱金香と呼ぶそうですね、原産地は中央アジアだとか。峻険なヒンドゥークシュ山脈をロバの背に揺られて越えて来たのでしょうか。強いひと。)


こんじきの

服は捨てたわ

わたげ着た

子どもら巣立つ

時が来るまで

(女性に母たること、を社会は押し付けてはいけない。でも母でありたいと想う人から、その価値観を奪ってもいけない。難しい時代。)


ぎこちなく

舞えるてふてふ

見送りて

わたしはひとり

てくてくと行く

(てふてふ、は蝶々。まだ羽化したばかりでしょうか。少し下手くそな飛び方のあなたが一人、下手くそな歩き方のわたしが一人。二度と触れ合わない命。)


ごとごとと

ひとそれぞれの

ことごとを

ひとつ乗せたる

各駅停車

(各駅停車の始点から終点まで、ぼーっと乗っていました。あたたかな日差しのなか色んな人の人生が一瞬だけ触れ合って離れていく。電車は知らん顔で進んでいく。)


春雨が

洗いざらし

さわやかな

風抜き抜けて

田に早苗満つ

(ふるさとは一面の水田に囲まれた世界です。この時期は、植えたばかりのお米の若子がそよそよと風に吹かれて気持ちよさそうにしています。)

 

にびいろの

空読む言葉

忘れおり

春に浮かれし

おのれ見つけん

(うかうかと春の寿ぎばかり歌っていたら、寒さが引き返し、鉛色の空が急に立ち込めると言葉が出て来ませんでした。まだまだです。)

 

今日を生き

明日も生きんと

ため息の

夢の中こそ

鈴の音よ鳴れ

(かさかさと心が乾燥する一日、ため息が重い夜。どうかあなたの夢の中だけでも、優しくて涼やかな鈴の音が鳴りますように。)

 

かわずなく

水田のうちに

ひしめきて

いずかた去りし

親を探して

(泣いているのか、鳴いているのか、恋しいのか、狂わしいのか、隣に誰かいてもひとりぼっちなのか。)

 

千代経りて

八千代かさねる

すめらぎの

御代渡す日に

慈雨さやと降り

(来し方の落着を寿ぎ、行く末の繁栄を願う。三十年、重き荷をおろす今日の日に、ねぎらいの雨が優しく降っておりました。)

 

お付き合い、ありがとうございました。