総州書房雑録

読んだ本の感想、考えたことを書いて行きます。

2021-01-01から1年間の記事一覧

峠(下)備忘編

スピードは金。 兵馬の精強無くして一般の正義無く、独立なく、自尊なし 人はその長ずるところによって身を過つもの。 長ずるところを用いられないと、鬱積する。 そうなると何とかしてその長ずるところを用いようとして現実を歪んだ解釈をしてしまう。 長じ…

峠(下)概要編

深川の藩邸から西洋商人スネルの船で江戸から脱出する継之助。 船内で後の日露戦争の英雄となる桑名藩士・立見尚文と談笑する継之助。 話しは「立場論」を中心に進んだ。 船は仙台で会津藩士を降ろし、函館で米を売り払い越後に帰り着く。 継之助が洋上にあ…

峠 中巻 【備忘編】

賢臣を登用し登用した以上は信用しきるのが名君の道 異例になると羨望から足を引かれる細心の配慮をせよ 改革はゆっくりとやるのが上策だが危急の時にあってはあっという間が良い みずから出向き みずから調査する 私情も私心も、命も捨てているものが強い …

峠 中巻 【概要編】

峠(中)司馬遼太郎 故郷に帰った継之助は役人として新しく領地になった村の内紛を見事に収拾して出世を遂げる。郡奉行と町奉行という藩行政の全ての頂点に座った彼は藩の改革に着手する。 ・賄賂の禁止・汚職役人の免職・寄せ場と呼ばれる「更生施設」・賭…

峠(上巻)読書備忘

峠(上)(司馬遼太郎) 河井継之助は越後長岡藩の100石格の家に生まれた。幼き頃よりいつか藩の宰相になるを誓い、その行動力を磨くために幕府の公認学派の朱子学ではなく、知行合一の陽明学を学び続けてきた。 彼は命の危険を冒しながら旅をした。それは雪…

トマト

足元に、トマトが転がっている。 私は日課の散歩道を歩いていた。長い坂道の途中の…閑静な住宅街であるから、どこぞの家庭菜園から転がってきてしまったものらしい。 私はその誰の口にも供されない運命の熟れた野菜を横目に坂を上り続けた。 ついでに、こん…

越山

越山、揮毫を頼まれるたびにその雅号を好んで用いた政治家がかつて存在した。 当たり前のことではあるが、彼の本名の威勢に比して雅号(越山)の知名度の低いことは否めない。 越山・田中角栄。 いわく「コンピューター付きブルドーザー」「目白の闇将軍」……

漂泊の王

安西、という人が新卒のころの同期入社組にいた。初対面での不躾を承知で「もしかして千葉の南の方の出身?」と聞いてみたのをよく覚えている。 「え?そうだけど…?」本人は驚いてはいたがなんのことはない。里見氏に滅ぼされた安房の豪族に同じ名前があっ…

若ちゃん痛風日記【ペイン!ダディ!ペイン!】

「痛風」になった。地獄の苦しみ。 でも、この苦しみは初めてじゃない。前にも経験したものだ。 そのたびに「もう生活習慣を改めます、神様…なのでどうか…じーざすくらいす」と眠れぬ夜に、天井に向かって手を合わせた。 なんだか…どこかで聞き覚えのあるセ…

ど素人、和歌を読む その3

「ふふ…変わったお歌ですこと」「そうか?どこが変だ?」 窓の外で、小鳥が朝の訪れをせわしげに告げている。 衣擦れの音は、閨の睦言の代弁者。そこかしこに散った衣たちは、逢瀬の残り火。 衾にくるまった男女がそこにいた。 「なんだか…野暮ったいという…

ど素人、和歌を読む その2

「まぁ!…陛下ご覧ください…。」「どうしたの…おやまぁ…。」 侍女の指さす彼方。真っ白の衣が、新緑のきらめく香具山に幾旒もたなびいていた。 香具山は古来、夏の訪れとともに衣を干すとされる。 神事や公務に追われて、私の知らないうちに季節は夏に移って…

ど素人、和歌を読む その1

「私の代わりに泣いてくれているのか」ふと、我が袖を湿らせる夜露に語りかけた。百姓たちが丹精込めて作った稲たちは一日でも早い収穫を哀訴するように実った稲穂を上下させている。「…冷えるな」収穫前の稲を盗人から守るために、百姓たちは田のそばに仮説…