総州書房雑録

読んだ本の感想、考えたことを書いて行きます。

2021-05-01から1ヶ月間の記事一覧

ど素人、和歌を読む その3

「ふふ…変わったお歌ですこと」「そうか?どこが変だ?」 窓の外で、小鳥が朝の訪れをせわしげに告げている。 衣擦れの音は、閨の睦言の代弁者。そこかしこに散った衣たちは、逢瀬の残り火。 衾にくるまった男女がそこにいた。 「なんだか…野暮ったいという…

ど素人、和歌を読む その2

「まぁ!…陛下ご覧ください…。」「どうしたの…おやまぁ…。」 侍女の指さす彼方。真っ白の衣が、新緑のきらめく香具山に幾旒もたなびいていた。 香具山は古来、夏の訪れとともに衣を干すとされる。 神事や公務に追われて、私の知らないうちに季節は夏に移って…

ど素人、和歌を読む その1

「私の代わりに泣いてくれているのか」ふと、我が袖を湿らせる夜露に語りかけた。百姓たちが丹精込めて作った稲たちは一日でも早い収穫を哀訴するように実った稲穂を上下させている。「…冷えるな」収穫前の稲を盗人から守るために、百姓たちは田のそばに仮説…